2026年のJEC Worldにおいて、アルケマとZephir Projectは、リサイクル可能な液状熱可塑性樹脂 Elium® を使用した、世界初のエコデザインのウインドサーフィン用スピードボードの試作品を発表しました。このボードは、設計段階から循環性を高める材料を採用しており、高機能、高精度、リサイクル性を兼ね備えた新世代の複合材料部品の実現に向けた道を切り開くものです。
このスピードボードは、Antoine Albeau 氏と Zephir Project によって今後の競技会で使用され、本共同プロジェクトにおける新たなマイルストーンとなります。
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2026年4月27日〜5月6日開催(フランス・オード県ラ・パルム):ウインドサーフィン・スピード世界選手権
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2026年6月1日〜6月30日開催(フランス・オード県):世界記録挑戦
トップアスリート競技が複合材料リサイクルを後押し
Zephir Project への参画により、アルケマは極限のスポーツ環境を自社材料の潜在能力を引き出す実証フィールドとして再び活用しています。セーリングのスピード記録に挑む際には、加速度、安定性、剛性といった極めて高いストレスが加わりますが、こうした条件下でも Elium®(英語) は高機能の構造部材設計と同時に、完全な化学的リサイクル性の維持を可能にします。Elium® は、解重合プロセスにより繊維と樹脂を分離してそれぞれを再資源化することができ、樹脂は再生樹脂として利用可能となり、FRP産業における完全な循環性の実現を強力に後押ししていきます。
JEC World 2026 で公開されたスピードボードの試作機に採用された Elium® は、複合材料FRP業界においてユニークな循環型デモンストレーターの極重要な役割を果たしています。
このボードは、リサイクル炭素繊維と、Elium® と同一の化学組成を持つコアフォームを用いたエコデザインにより、リサイクル時に分離工程を削減できます。その結果、高い機械的性能、高精度な製造性、そして完全なリサイクル性を兼ね備えています。
さらに、Elium® の液状特性により、スピードボード特有の複雑な形状および高い精度を求める部品の成形が可能です。また、要求水準の高いスポーツ環境で使用される熱硬化性材料に匹敵する性能も発揮します。
Zephir Project のような大きな望みを持った先進的プロジェクトに Elium® が採用されることは、アルケマの完全循環型の複合材料の開発を加速させる能力と、製造業者の低炭素ソリューションへの移行を支援する姿勢を明確に示しています。このデモンストレーターは、アルケマの機能性材料が、極限性能、イノベーション、そしてサステナビリティを実現し得る可能性を示すものです。
このプロジェクトには、各分野を牽引する主要企業・団体が参画しています。
- Zephir Project: Marc Amerigo 氏と世界チャンピオンセーラーであるAntoine Albeau 氏によって共同設立されたプロジェクトで、先進的なシミュレーション、材料革新、そして極限環境下での試験を組み合わせた最先端の科学的アプローチにより、セーリングのスピード記録の限界に挑むことを目的としています。
- ALTEN: エンジニアリングおよびITサービスのグローバルリーダーとして、超高性能複合材料構造のモデリング、シミュレーションおよび最適化に関する専門知識を本プロジェクトに提供しています。
- アルケマ: 機能性材料の世界的リーダーであり、世界初のリサイクル可能な液状熱可塑性アクリル樹脂Elium® を開発。高機能な構造部品の製造を可能にするとともに、複合材料の循環性向上にも貢献しています。
- Alpha Recyclage Composite: 複合材料のリサイクルに特化した新たな産業分野の確立を牽引する主要企業であり、特にリサイクル炭素繊維の回収およびアップサイクルにおいて重要な役割を果たしています。
- Evonik: 高機能材料を専門とする国際的な化学企業であり、軽量かつ高剛性の複合構造に使用される技術系アクリルフォーム Rohacryl® の主要サプライヤーとして知られています。
- Neo Sailing Technologies: 先端材料を活用している造船分野のパイオニアであり、世界で初めて Elium® のみでレーシングボートを製造した企業です。この成果により、同樹脂によるリサイクル可能技術の潜在力を非常に早い段階で実証しました。
Zephir Project について
Zephir Project は、記録挑戦の分野で著名なエンジニア Marc Amerigo 氏と、ウインドサーフィンでフランス史上最多、27個世界タイトルを獲得したアスリート Antoine Albeau 氏によって共同設立されました。本プロジェクトは、高機能なパフォーマンスと環境責任の両立を目指し、技術的・競技的探求を進める取り組みを中心としています。体系的なアプローチに基づき、研究、試験、コンセプト検証といった段階を着実に進めながら、「究極の滑走」の秘密を解明し、新たなセーリングスピード記録の樹立を目指しています。
プロジェクトはまず、3Dモデリング、ビッグデータ、人工知能を活用した高度な解析とシミュレーションの工程から始まり、超高速艇の安定性、エネルギー、揚力、安全性に影響を与えるパラメータを解明します。
このデジタル解析に続き、風洞試験や機体搭載計測など、管理された条件下での実験フェーズが実施され、試作機の動的挙動を検証します。データ解析やAIアルゴリズムを活用することで、これらの試験は形状のブラッシュアップ、構造の最適化、そして記録更新に向けた設定準備において極めて重要なステップとなります。
第3フェーズでは、Antoine Albeau 氏とともに実際の海上で試験が行われ、これまでの技術的進歩が競技パフォーマンスへと昇華されます。チャンピオンの使用するボードは、素材選定、構造設計、そして空力・流体力学的パラメータのすべてを実環境で検証するための“実験ラボ”そのものとなります。このアプローチにより、2024年末には500メートル区間で 53.49ノットという新たな世界記録が樹立され、Zephir Project が採用する段階的アプローチの有効性が裏付けられました。