パリ航空ショーにおいて、HELUESプロジェクトの一環として、翼上緊急脱出口用の複雑な構造部品をデモとして公開しました。本プロジェクトは、次世代の高効率航空機の大量生産を視野に、航空宇宙部品の製造プロセスを革新することを目標に、複数のパートナーが連携して進めている取り組みです。
HexcelとArkemaは2018年に戦略的提携を締結し、Hexcelの炭素繊維技術とArkemaのPEKK(ポリエーテルケトンケトン)に関する専門性を融合させ、航空宇宙向けの熱可塑性複合材料ソリューションの開発に取り組んできました。今回、パリ航空ショーにて、HELUESプロジェクトの一環として開発された、先進的なPEKK樹脂と炭素繊維からなる熱可塑性複合部品が披露されました。単通路型ジェット機を中心に、航空機の効率的かつスケーラブルな製造への需要が世界的に高まる中、HexcelとHELUESプロジェクトのパートナーは、新素材及び新プロセスの導入によって、OEMが直面する生産性上の課題解決を支援しています。
ArkemaとHexcelによる超耐熱・熱可塑性樹脂を使用した新しい製造プロセスの先導
HELUES技術の中核には、HexPly®一方向(UD)炭素繊維強化 Kepstan® PEKK tapes (英語) とKepstan® PEKK射出成形用コンパウンドを用いた、「ワンステップ成形・インサート成形技術」があります。この統合されたプロセスにより、補強リブや機能要素を含む複雑な構造部品を、2分未満で迅速に成形できるようになります。
熱可塑性樹脂技術は、航空宇宙分野において以下の3つの利点をもたらします。
- サイクルタイムの劇的な短縮:従来は数時間を要していた工程を数分に短縮し、月あたり80〜100機の生産目標にも対応可能。
- 設計自由度と軽量化:可塑性樹脂は再成形および溶接が可能で、設計の自由度が高く、軽量化にも寄与。
- 持続可能性とリサイクル性の向上:熱可塑性樹脂は再処理・再利用が可能な素材。
HELUESのデモは、従来の複数部品によるドア構造を、単一の統合部品へと置き換えるもので、部品点数と組み立て工程を最大90%削減します。初期段階の試験では、成形リブと熱成形されたラミネートの間の優れた材料結合が確認され、過酷な航空宇宙環境における部品の実用性がさらに裏付けられました。
商業航空機の分野で高い生産効率と自動化された持続可能な組み立てラインによって定義される未来に備える中、熱可塑性樹脂は次世代航空機の主要材料として注目を集めています。エネルギー集約型のオートクレーブへの依存を減らし、ロボットによる製造プロセスを可能にすることで、HELUESコンポーネントのようなソリューションは、複合材の革新が、性能と生産性の両立をどのように可能にするかを示す好例です。
HELUESプロジェクトは、ドイツ航空宇宙センターの資金提供と、バイエルン州経済省の支援を受けて進められており、以下のパートナーが参画しています:Airbus Helicopters Deutschland GmbH, Neue Materialien Bayreuth GmbH, Christian Karl Siebenwurst GmbH & Co. KG, Incoe Corporation