静電塗装
静電塗装とは、粉体粒子を帯電させて、常温で金属表面に静電気で付着させ、その後加熱・冷却して塗装する方法です。"コロナ"または"トリボ"スプレーガンなどの特殊なスプレー装置を用いて粉体を帯電させて、アースされた被塗体に吹き付けます。
静電塗装の工程
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静電塗装に適した被塗体
被塗体の厚み:
6㎜までの厚さの部品のコーティングに推奨
推奨コーティング膜厚:
80〜120 µm (Rilsan® PA11 ESYグレード)、100〜150 µm (Rilsan® PA11 ESグレード)
コーティング可能サイズ:
コーティングする部品のサイズに制限なし。 部分的なコーティングも可能。
被塗体の材質およびその表面処理:
220℃の温度に劣化なく耐えられる全ての種類の導電性金属基盤に適しています。表面に汚れなどの付着がなく、活性な金属表面が露出していること。
塗装条件
塗装表面の処理
塗装する部品は、油脂類がなく、きれいな状態であることが必要です。プライマーは、被塗体金属表面とRilsan®との密着を促進します。防錆性能と優れた耐熱水性を得るためには、Rilsan® PA11 ESとRilsan® PA11 ESYの両グレード共にプライマーが必要です。また、静電気の発生や加熱溶融時の粉落ち不良を防止するため、Rilsan® PA11 ESグレードにはプライマーの塗布を推奨しています。詳細については、表面前処理とプライマーの資料をご参照ください。
スプレー
Rilsan® PA11 ESグレードは、コロナタイプ (プラスまたはマイナス) またはトリボタイプのスプレーガンを使用することが必要です。コロナスプレーの場合、極性は30~40kV、強度は20µA、流量は120g/minを推奨します。トライボ式スプレーガンでも同じ流量を目安にしてください。これらのパラメータは、特定の装置で最適化する必要があることに注意してください。Rilsan® PA11 ESYグレードは、マイナス帯電のコロナスプレーガンでのみ使用できます。極性は-30~-70kVで、強度と流量はESグレードと同じを推奨します。なお、ダクトで回収されたRilsan® PA11 ESパウダーはリサイクル可能で、バージンパウダー ( 未使用のパウダー) と混合して使用できます。一方で、Rilsan® PA11 ESYパウダーのリサイクルは推奨しません。静電スプレープロセスの理想的な条件は、温度20℃±5℃、湿度50%近辺です。
溶融
被塗体表面に付着させたRilsan® PA11パウダーの溶融は、温度制御されたオーブン (全体が均一な温度) の中で行う必要があり、パウダーが付着した被塗体に空気が速く吹き付けられることがないように、適切な空気循環 (通常3m/sec以下の風速) が必要です。連続処理には、トンネル型オーブンが適しています。熱硬化性粉体塗料とは異なり、Rilsan® PA11パウダーは架橋しません。215℃ +/- 5℃の表面温度でパウダーが溶融し、塗膜形成と同時にコーティング特性が発現します。パウダーを溶かし、コーティングを冷却するのに必要な時間は、部品の厚みや構成によって異なります。目安として、平滑な冷間圧延鋼部品のRilsan® PA11コーティングでパウダーを溶融するのに必要な滞在時間は、オーブンの温度が215℃の場合、次のグラフになります。
ホットスプレー
ホットスプレーは、あらかじめ加熱された被塗体にRilsan® PA11パウダーを噴霧するプロセスです。パウダーは予熱された成形品に衝突するとすぐに溶融し、表面に塗膜を形成します。ホットスプレーでは、Rilsan® PA11 TとFBグレードは、250~600µmの塗膜厚のコーティングを推奨しますが、十分な厚み (3mm以上) の被塗体に限られます。Rilsan® PA11 ESグレードとRilsan® PA11 ESYグレードは、被塗体の厚みが6㎜未満であり、塗膜厚を200µm未満としたいときに使用できます。
被塗体の表面処理と予熱条件は、流動浸漬の場合と同じです。帯電をオフにすれば、従来の静電スプレーガンで吹き付け可能です。プライマーが適切に硬化し、被塗体が十分に加熱されるよう、オーブンの温度と時間の調節が重要であることに注意してください。詳しくは、流動浸漬法と表面処理とプライマーのページをご覧ください。
静電スプレーの利点
- 塗膜制御性が良い
・部分塗装が可能 - パウダーを溶かす温度が低い
- パウダーを溶かす時間が短い
- 熱硬化性材料に比べ架橋のリスクがない
- パウダーの在庫が少なくて済む
- 塗装工程の自動化が容易